『筆録 日常対話 私と同性を愛する母と

 

ホアン・フイチェン (著)

小島あつ子(翻訳)

発行:サウザンブックス社

四六判  224ページ 並製

価格:2,500円+税

ISBN:978-4-909125-30-9

発売予定日:2021年7月27日

 これは私の母の物語。
古いしきたりの残る農村に生まれた母は、伝統的なものから外れた女性だった。
母が女の人を好きだということに気がついたのは、私が7歳の頃。
そして今「おばあちゃんは男なの?女なの?」という七歳になった姪っこの問いに説明できない自分がいた。

映画『日常對話』の監督が、母親を中心とする家族の物語を文字で編んだ、もうひとつのセルフ・ドキュメンタリー。
小学校すら卒業できなかった不遇の子供時代。そして、著者が誰にも明かせなかった、父親から受けていたある虐待の記憶は、いつしかかたちを変え、著者と母親の間の埋められない深い溝となる。そんな母親と向き合い、関係を修復するために作られた入魂の作品。

 

[目 次]

 

はじめに──傷を恥じることはない

第1章 同性を愛する私の母・阿女

──1956年生まれの著者の母アヌは雲林の小さな農村で生まれ育ち、14歳で台北へ出稼ぎに出た。男尊女卑の考えが根強い、伝統的な男性中心の家制度が当たり前だった農村で過ごしたアヌの幼少期に始まり、台北での初恋と失恋、夫・阿源との見合い結婚、そして牽亡歌陣団を立ち上げてから、32歳で娘二人を連れて家を逃げ出すまでを描く。

 

第2章 不存在の父・阿源
──父・阿源は塗装工の日雇い労働者として働いていたが、稼いだ金は家に一銭も入れず、酒と賭博に使い果たした。アヌから金を巻き上げ、激しい暴力を振るっていた父から、著者も虐待を受けていた。家を逃げ出した後も、阿源の影におびえながら生活するアヌと娘たち。著者は成人ののち、叔父からの連絡で、父が自殺したことを知る。

 

第3章 私の妹・阿娟
──著者の2歳年下の妹・阿娟は、母アヌに代わり著者が面倒を見てきた。共に過ごした幼い日の思い出。やがて「家庭」への強いあこがれから若くして結婚を決意する阿娟に対し、複雑な思いを抱く著者。さらに母の作った借金を目の前に、著者は住んでいたアパート屋上の給水塔の上へと登り…。

 

第4章 同性を愛する母と女性たち
──母アヌは「女性が好き」であることを周りに隠すことはなかった。仕事や生活を共にし、著者と妹の面倒を見てくれた8人のアヌの女性たち。それぞれの事情を抱えた彼女たちから、女性の様々な生き様が見えてくる。

 

第5章 記憶の中の家
──娘たちを守るため、着の身着のままで家を飛び出した母娘。家族が暮らしていた家と、そこに置き去りにした物について、記憶をたどる。

 

第6章 私と私自身のこと・阿偵
──家計を助けるために6歳で家業の手伝いを始めた著者は、10歳の時に母アヌと妹と共に家を逃げ出す。DVシェルターなど無かった時代。父・阿源に行き先を知られないために、著者は身分を証明することができず、小学校にも通うことができなかった。やがて大人になった著者は、あることがきっかけとなり、自分の家族について、映像記録を残すことを決意する。著者自身が自分の半生を振り返る。

 

あとがきにかえて ディレクターズノート
──台湾で同性婚の合法化に向かって議論の進んでいた2013~2014年を背景に、撮影を通し、著者は母について、生まれ育った環境について思いを巡らせる。

 

訳者あとがき